視察報告-武蔵野市・渋谷区

出張者:森山きよみ

【日程】  平成29年7月3日  午後1時30分~3時10分

【場所】  武蔵野プレイス(東京都武蔵野市境南町二丁目3番18号)
  
【応対者】 武蔵野プレイス事業部 プレイス管理課長

【調査事項】 


1、建設に至った経緯
 武蔵野市が、昭和48年に東京食糧事務所に対して現在の武蔵境駅前の食料倉庫跡地払い下げ要望書を提出
 平成17年度「武蔵野市第四期基本構想・長期計画」において「知的創造拠点として図書館機能を中心とした『新公共施設』を建設し、多世代にわたる利用と広域的な市民活動の場とする」としての施設を位置づける。
   平成21年1月建設着工
   平成23年7月オープン   (詳細は、「武蔵野プレイス」P10)
  


2、施設の特徴
 建物は、地上四階 地下二階。
 図書館機能 生涯学習支援機能 市民活動支援機能、青少年支援機能 の四つの機能がありその機能が別々に働き、効果があるという事ではなくて、四つの機能が融合しあってより効果が上がるコンセプトになっているところが最大の特徴である。地下二階が、青少年支援機能が配置され、平日の午後という時間帯にもかかわらず、卓球場スペース、自由に歓談できるスペース、音楽や美術などに関する芸術書を所蔵したアート&ティーンズライブラリーも満席である。


 また、パフォーマンススタジオ、サウンドスタジオ、クラフトスタジオ等今の若者たちのニーズに合った練習・発表の場も設けてあり、視察当日は、使用されていなかったが、非常に人気があるとの事であった。
 

 

 

 




 図書館・生涯学習支援は、1・2階に設置され、市民の方々の今のニーズに応えるために関係の図書が配置され、郷土コーナーもあり、全体の開放的な造りと相まってとても利用しやすい空間となっていた。ほぼ満席の状況であった。最も印象的だったのは、一階フロアーの中心部にカフェがあり、利用者も多く本を読みながら、お茶をしている人も多かった。夕方からは、アルコールも出すとの事。
 

 3・4階は、市民活動・生涯学習支援の場であり、NPOを含めた各種の市民活動の方々が活動されていた。また、ワーキングデスクは、40席あり、個人学習の方々が、利用され満席であった。
また、各種の会議に利用される小さな部屋もあり有効活用がなされていた。今企業が会社内での会議をするスペースを確保せず社外の貸し部屋で会議する傾向があるとの事でニーズが高いようである。


 

 


3、施設の利用状況
 平成23年の開館当初は、年間80万人の利用を予想していたが、平成28年度は、190万人となり、予想をはるかに超える利用者となっている。今年の7月には、延べ1000万人を超える予定との事。
最近は、一日1万人近くの方が利用する日もあるとの事。
青少年支援機能がある地下二階の利用が、非常に多い事が武蔵野プレイスの特徴でもある。高校生が自由に飲み物や軽食を食べていたのも印象的だった。
隣接している大型商業施設の利用者が来ることもあるが、武蔵野プレイスを利用した方々が、近くの商店街で買い物をすることから、地域の活性化にもつながっているとの事。更には、武蔵野市の近隣の西東京市等と広域の利用もできる事から交流人口も増加しているとの事。


4、成果と課題
 武蔵野市には、町内会等の自治会組織が無く、地域コミュニティーをどうするかという課題も市全体の大きな課題であったようだが、市が抱える行政課題の広報や市民同士の情報交換等に対して、武蔵野プレイスが果たしている役割は、大きいようである。
 また、都心からそう遠くないことから市域内の人口が増加しており、市民の方々から求められる「知的創造」の拠点として今後も多くの市民の方々並びに近隣の市・区からの利用者の増加が見込まれるとの事。課題としては、武蔵野市以外の利用者と武蔵野市の市民の利用者との差別化をどう図るか、利用料金の検討、市民優先利用の検討等があるようだ。



≪所感≫
 今、全国的に図書館が注目されている。その視点は、昔ながらの「無料貸本屋」というイメージ、役割から集客施設としての図書館、多機能型図書館等である。その最先端にいるのが武蔵野プレイスである事は、間違いない。東日本大震災の年に開館し、今では利用者が倍増し、今後も増加していくということは、いかに市民のニーズに合っているかを物語っている。集客施設のもう一つの効果は、近隣の商店街の活性化にもつながっているとの事。
 最も印象的だったのは、この施設の構想を作る時に当時の市長が青少年とのタウンミーティングで高校生から(施設の利用について)「周りに大人がいると使いづらい」という意見があり、地下二階に青少年支援機能をしかも自由に使える各種スペースを持ってきた事である。鹿児島市の青少年が大人の目を気にせず、自由に音楽やダンス更には、楽器の演奏などできるスペースを提供する事は自治体の役割であることを痛感した。

 

 

 



【日程】  平成29年7月4日  午前9時35分~午前10時30分

【場所】  東京都渋谷区 区役所仮庁舎二階

【対応者】 渋谷区教育委員会教育振興部学務課ICT教育政策担当主査・渋谷区議会事務局調査係長

【調査事項】 渋谷区教育情報化システムの導入について

1、渋谷区における小中学生一人一台タブレット導入の目的
   ・子ども達を取り巻く環境・社会が大きく変わりつつある
   ・平成32年度から学校における指導内容が変わる
   ・教職員の多忙化が深刻な状況になっている

 以上のような背景があったが、区長が、義務教育の中では、全ての児童生徒に対して平等に機器を与えて、教育をするべきという考えが大きいようだった。
  
2、平成29年度予算の概要
 区域内の小学校26校、中学校8校の全ての児童・生徒に対して備品賃貸借料として約5億2千万円(一人一台のタブレット) 
 備品購入費として2億5千万円(プロジェクター、画像転送機器、充電関係機器等) 全て一般会計からで国・都の補助なし

3、学習サービスの概要と期待効果
 ・授業における同時共同編集でみんなの意見の見える化が図れる
 ・授業において、他の児童・生徒の考え方に触れ考える
 ・ドリルと動画を使い、自分のペースで予習・復習が可能に
 ・小1~中3までで、ドリルの問題が合計21,000問以上動画が11,000以 上ある事から一人一人にあった学習を実現する事ができ、
  それを保護者がチェックできる。

4、教職員等の研修体制
 ・先生を対象とした研修
     タブレット活用研修    60分×1回
     プロジェクター活用研修  60分×1回
     新システム導入研修    90分~120分×1回
     セキュリティ・モラル研修 90分×一回


 ・児童生徒を対象とした研修
     セキュリティ・モラル研修  45分~50分×1回
     個人情報の取り扱い 著作権や肖像権 情報社会に必要なモラル


≪所感≫
 平成32年度から新しい学習指導要領が実施されるが、情報活用能力の育成とともに、プログラミング教育の重要性や情報機器を活用した指導を進めていく事が求められていく中で、全ての児童生徒に一台のタブレットを与え、授業並びに家庭学習に活かしていくという時代を先取りした施策に驚いた。鹿児島市では、現在約3名弱に一台のタブレット支給であり、未だ十分な活用状況かといえばそうでない。
 最も目を引いたのは、現在家庭学習の時間が少なくなっている現状をどうしていくかが問われているが、渋谷区モデルでは、児童生徒一人一人が自分の学習の進捗にあった家庭学習ができることから、家庭学習の時間が増えることである。課題としては、全ての費用が区の一般財源ということで、ランニングコスト、イニシャルコストが高く財政上の課題は大きいと言える。しかしながら、この流れは、今後一層進んでいくものと考えられることから、国の補助も必ず付くことが予想される。その時になって導入について検討するのではなくて今から各面において本市でも研究・検討していくべきと痛感した。

2017年07月10日