視察報告-練馬区・川西市・山口市・福岡市

出張者:秋広正健


【日程】   2019年1月15(火)14:00~16:00

【場所】   東京都練馬区

【調査事項】 練馬区における都市農業について

【対応者】  都市農業担当部農業課長・世界都市農業サミット担当課長、係長、議会事務局調査係
        

 

【調査概要】 

⑴都市農業の現状
練馬区には住宅地の中に、かなりの規模で農地が点在し、区民生活と融合した生きた農業が営まれている。練馬区の都市農業は、農業体験農園や果樹ファームなど、都市住民のニーズに応え発展してきた。
⑵特色

①練馬区は、東京都23区内の農地の約4割を占めている。

練馬区 215.6 ha
世田谷区 104.9 ha
足立区 55.9 ha
江戸川区 48.5 ha
杉並区 38.9 ha




 

 

 

 

 

②練馬区の農業者は、面積当たりの収入が高い、付加価値の高い農産物の生産がおこなわれている。
1haあたりの農業産出額

東京都 295 百万円
練馬区 524.4百万円
世田谷区 334.6百万円






 

③キャベツの大生産地、果樹栽培が活発である。
※都の各農産物生産自治体3都市の割合
(キャベツ)

練馬区 22.7%
西東京市 10 %
八王子市 7.2%


 

 

 

 

(柿)

練馬区 8.5%
東久留米市 7.5%




 

(ぶどう)

福生市 22.4%
調布市 12.1%
練馬区 11 %


 

 

 

 

④練馬区は、都心から約30分にあり気軽に行ける。いろいろな摘み取り園があり、都心にいながら気軽に農に触れ合える。
 東京都内には、観光農園が147園あり、練馬区には ブルーベリー 30園、キウイフルーツ 2園、柿 2園、ぶどう・みかん・いちご 各1園ある。

⑤農業体験農園は練馬区が発祥地で、多くの農園がある。
(農業体験農園数及び区画数)

  農園数 区画数
全国 133 7,420
東京都 87 5,409
練馬区 17 1,857
町田市 8 372
東村山 4 409
さいたま市 2 58
千葉市 1 147
京都市 3 123

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


⑶課題
①この23年間で236.5haの農地が減少
※ 練馬区 52.3%減、特別区(11区平均) 60.8%減

②農業従事者の高齢化と減少
・農業者の担い手年代
   20代  1%    30代 4%   40代 6%  50代 21%  60代30%
   70代  21%  80代以上 15%

・農業戸数、農業従事者数の推移
農家戸数 農業従事者数

  農家戸数 農業従事者数
平成10年 734戸 1,740人
平成28年 429戸 910人


 

 

 

 

 ※平均年齢  東京都 63.9歳    練馬区 63.5歳

③農と触れ合いたい区民

⑷区の取組みと成果
①国へ制度改正の働きかけとして、区が先頭に立って市街化区域内の農地制度等の改正を要望してきた。
平成27年4月、都市農業振興基本法が制定され、都市農地は「宅地化すべきもの」から「あるべきもの」となった。平成29年5月、生産緑地法が一部改正され、生産緑地地区の指定にかかる下限面積が500㎡から300㎡へ変更され、生産緑地地区内に直売所や農家レストラン等の設置が可能となった。
引き続き、都市農地の保全のためには、賃借にかかる規制緩和に向けて、賃借した生産緑地の「買取申出制度の拡大」、「納税猶予制度の適用拡大」に向けて取り組んでいる。

 

②意欲的な農業者への支援
・平成27年3月、「ねりま農サポーター」を育成し、支え手を必要とする農業者とつなげるため、「練馬区農の学校」を開校。平成29年3月末現在、40名の「ねりま農サポーター」を育成。平成29年8月末現在、31件の農業者とマッチング。

・経営改善に計画的かつ意欲的に取り組む農業者を練馬区認定農業者、練馬区都市型認定農業者として支援を実施。(平成29年3月末現在、81経営体)

・農業用簿記の講習会、記帳会を開催

・経営改善のためのパイプハウス等の整備を支援(整備事業等に3/4、最大5/6の補助を行っている)

 

③農と触れ合える機会の充実、魅力の発信
・果樹のあるファームの推進

  観光農園数 直売所数
ブルーベリー 30 15
ぶどう 1 11
みかん 1 8
キウイフルーツ 2 4
2 8
いちご 1 4
0 4
合  計 37 54

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・「ねりマルシェ」の開催
消費者と生産者が繋げる「ねりマルシェ」は、「さっきまで畑にあった」新鮮な農作物を、区内10か所で農業者自らが商業者と連携し開催している。(平成28年24回開催)

⑸今後の方向性
①平成27年に行った区民意向調査で、72%の区民が「練馬区に農業があることは、欠かせない重要なものである」と回答。

②求められる農業施策(平成27年度区民意向調査より)
 ・意欲ある農業者の取組みに対する支援         39.0%
 ・練馬産農産物のブランド化による魅力の発信      26.3%
 ・駅等での直売イベントの実施             25.3%
 ・「ねりマルシェ」の開催・支援            21.6%
 ・区民農園等の貸し農園の充実             19.6%
 ・練馬果樹あるファームの推進             16.2%
 ・農業にかかる人材(支え手)の育成          13.6%
 ・農と触れ合うイベントの開催             6.5%

③ 区民の想い(平成26年度区政モニター等により)
 ・農業体験がしたい       

 ・農と触れ合いたい   
 ・美味しい練馬産農作物を食べたい
 ・新鮮な練馬産農作物を購入したい    
 ・農業者を支えたい
 ・農業に従事したい  
 ・農地や屋敷林など昔ながらの景観を残してほしい
 ・災害時の不安を減らしたい

④これからのまちの「かたち」
 新鮮な農作物の供給、防災機能、農業体験等での交流の場としての都市農地、農業の魅力をもって、今後の都市生活を豊かにする。

⑹これからの取組み
①世界都市農業サミット開催(平成31年)
 平成31年の開催に向け、小中学生を対象とした「みんなde農コンテスト」(平成30年7月1日~9月7日)、都市農業の魅力を広く発信し、機運を高めるプレイベント(平成30年11月23日~25日)を開催   ※詳細は別紙資料

②農業振興の各種取組み
 ・農業者による農業体験園の開設促進
 ・障がい者が農業に関われる福祉機能を持った農園の開設
 ・農地の防災機能をさらに引き出し、災害時の区民の安心を確保
 ・練馬産農産物が購入できるマルシェ等の拡充
 ・6次産業化への取組み支援、農商連携の推進
 ・練馬果樹あるファームの拡充
 ・先進的な農業に取り組む業者を支援
 ・希望する区民が市民農園、区民農園を利用できる環境の拡充

≪所感≫
 練馬区は、公園や家庭の庭木だけでなく、畑や果樹園のある緑豊かなまちである。ブルーベルー、ぶどう、みかん、キウイフルーツ、柿、いちご等、年間を通して完熟した新鮮な果実を味わい摘み取り体験を楽しむことができるため、果樹・農とふれあい、チャレンジする生活を楽しめる。
 区は、意欲ある農業者への支援に取り組み、農業者と区が一体となって魅力ある農園づくりを行ってきた。その結果、10年でブルーベリー園が30園、その他、ぶどう、みかん、キウイフルーツ、柿、いちご各園が整備され、多く区民が「農」と触れ合い、チャレンジしているとのことでした。
 今後の都市近郊農業推進について、自給的農家、小農家、行政が、それぞれ何をすべきか、参考になった。




 

 


【日時】   2019年1月16日(水)13:30~15:30

【場所】   川西市
                           
【調査事項】 団地再生の取り組みについて

【対応者】  都市政策部副部長、住宅政策課長、住宅政策課主査、議会事務局主幹


【調査概要】

 兵庫県では、昭和40年代を中心に開発された郊外団地(ニュータウン)が数多くあり、多くの団地で少子・高齢化が進行し、地域活力の低下が懸念されている。
 川西市においては、昭和40年代以降に開発された「ふるさと団地」と呼ばれる10団地があり、全団地の人口は市内全体の約4割を占めている。特に分譲開始から40年以上経過した団地では、人口減少や高齢化が進み、地元商店が閉店し、空き家が増加するなど、地域活力の低下が顕著化している。
このような背景を踏まえ、川西市では、団地再生・活性化に向けた取り組みとして、平成23年度から3団地(大和団地、多田グリーンハイツ、清和台)において、地域住民、民間事業者、行政が連携したモデルプロジェクトに取り組んでおり、3団地での取組事例等をベースとした、川西市の団地再生の指南書となる「ふるさと団地再生の手引き」を28年度に策定している。


1.  モデル3団地における主な取り組み事例

(1)大和団地:ニコニコプロジェクト(25カフェ)
 地元商店と連携した「多世代交流の居場所づくり」をテーマに、地元自治会が運営主体となり、商店会やコミュニティ推進協議会、大学、行政等(検討チーム)と連携し、空き店舗(洋菓子店2F)や空き家(個人住宅)を地域住民のイベント活動等に利用できる交流空間として活用している。
プロジェクトの検討過程においては、行政(川西市)もプレイベントの企画・実施、資料づくり、広報作成等など幅広い支援を行っており、産官学との連携が重要であると考えられる。
 住宅(空き家)の1階を25カフェとして利用している空間では、団地内の高齢者の方々が数名集まり、娯楽活動に楽しまれているとの事であった。建物の所有者は、県外に居住しているが、地元住民との親交が継続しているため、維持管理等も含めて地域住民での運営を行っている。(利用料100円/回)


 

 今後の課題としては、利用者を増やすことや、管理も行ってくれる新たな人材(若年層の取り込み)の発掘が必要との事であり、継続的な取り組みが求められている。


(2)多田グリーンハイツ:おでかけ支援プロジェクト
 団地内には坂道が多く、バス停からも遠いため、高齢者や子育てママの移動が困難であったことから、地域住民が地元スーパー(西友)等と連携・協力し、団地内のおでかけ支援として、地元自治会が運行主体となり、車両リースし、スーパーまで無償運送(ガソリン代のみ徴収)を行っている。
事業スキームとしては、自治会に対し、地元スーパー(西友)から地域活動費として寄付(数十万円程度)があり、自治会活動の一部として車両リース代などに活用しているとの事であった。
 運転手は、地域ボランティアや自治会メンバーが数名程度おり、道路運送法上の許可を必要としない「ボランティア輸送」として運行している。
利用者数は、月100~150名程度、買い物金額は5千円程度とのことであり、スーパーに買い物金額を報告し、効果を検証している状況であった。

 

 


(3)清和台:地域みんなで防犯パトロール
高齢化による地域活動の停滞、若年層(子育て層)との交流不足などの課題があったことから、「多世代が気軽に参加しやすい防犯パトロール」をテーマに、団地内の30~40代の若年層がリーダー・サブリーダーとなって、月1回程度のウォーキングを実施している。
特徴としては、参加者の出欠点呼をとらず、具体的な目標を定めないなど、気軽に参加できる雰囲気づくりに努めている点であり、活動の認知度を高めるため、ウォーキンググッズとしてのぼりと手ぬぐいを作成(川西市)している。
今後は、ウォーキングを楽しめるイベントとして盛り上げるため、地域住民が主体的にリーダー・ミーティングを行い、参加者を増やすための知恵を絞っている状況とのことである。


2.市の支援策

若者世帯の流入・定住化の促進、子育て・介護等の共助の推進を図る必要から、市内全域(団地外も含む)にマイホームを取得した際の登記費用(上限20万円)を助成する「親元近居助成制度」がある。
平成25年度から28年度までの実績は、約380件(年平均100件)あり、予算額は約2千万円/年である。なお、賃貸を助成対象としない理由としては、市内への定住化を目的としているためである。
市と連携協定を結んでいる地元の銀行では、「川西市親元近居住宅ローン」を取り扱っているが、これは、市の親元近居助成に伴った金融商品の開発について、市から銀行へ調整を行ったことで実現した成果とのことである。


≪所感≫
川西市では、モデル3団地において先進的な取り組みを進めているが、その担当者からも、「団地再生のゴールは無い」との発言があり、団地が再生した実感を得るには相当な時間を要すると思われる。 
鹿児島市においても、既存の子育て・福祉関係の支援施策と併せて、川西市の事例を参考に「おでかけ支援」や「親元近居助成制度」など、新たな施策を展開していくことが再生に向けた有効な手法ではないかと考えられる。

 

 


【日時】    2019年1月17日(木)13:00~15:00

【場所】    山口市                             

【調査事項】  地域づくり交付事業について

【対応者】
         地域生活部協働推進課地域づくり支援担当係 


【調査概要】  地域づくり交付事業について

 山口市は、瀬戸内海と中国山地の山々を擁し、豊かな森や川、海に恵まれ田園の豊潤さが育んだ堅実な精神性をよりどころとする風土を築いてきた。また、先人たちが築いてきた大いなる歴史・文化の伝統にも支えられ、これまで山口県における政治・行政・教育・文化等の中心的役割を担い、多くの優れた人材を輩出してきた。今後、経済や産業、学術文化等の様々な分野を振興し、広域的に質の高い都市的サービスを提供するなど、広域県央中核都市としてますますの発展が期待されている。
このように、将来性豊かなまち、住んで良かったと思えるまち、訪れてみたく思えるまち、人との絆を大切に共生の心を育むまち、生涯にわかって平等に学びあえるまち、子供たちが夢と希望を持ち、健やかに成長できるまちをつくっていくには、生活者としての市民が持つ、豊かな創造性と社会経験を十分に生かし、市民も自らの役割を自覚し、まちづくりに積極的に参加していかなければならない。
そのためには、市民と市、又は市民同士が相互にその特徴を認め合いながら、協働してまちづくりを進めるとともに、地域社会を構成する多様な主体が共に地域社会を支えるパートナーであることを認識し合い、市民と市との適切な役割分担のもと、連携してまちづくりに取り組んでいく必要があります。
このような認識のもと、100年先、200年先へとつながるまちづくりの礎となるよう、市民と市、または市民同士が協働してまちづくりを進めるために必要なルールを示すものとして、「山口市協働のまちづくり条例」を制定し、地域づくり交付金交付要綱を作成し、個性豊かで活力ある自立した地域づくりに、地域に平等に地域づくり交付金として交付するものである。


1.協働によるまちづくりの取り組みの経過

平成19年7月より平成20年9月まで、全18回開催された山口市協働のまちづくり市民会議が提言書(平成20年9月)をもとに、条例案を作成する等、市民と協働で平成20年12月に「山口市協働のまちづくり条例」を制定し、平成21年3月に山口市協働推進プランを策定し、平成21年4月より山口市協働のまちづくり条例を施行し、組織整備、環境整備、人的支援、財政支援などの取り組みがなされ、協議会、自治会、町内会等では各種取り組みがなされている。


2.地域づくり協議会の概要、組織整備

市が主導し、自治会や町内会を中心に、地区社会福祉協議会やPTA、老人クラブなど、地域における各種団体が連携して地域の課題解決に取り組むための組織である「地域づくり協議会」を全21地域に設立し、各地域で将来目指す姿の実現に向けて、地域が取り組む地域課題解決のための活動を計画する「地域づくり計画」を策定。

 

3.市としての環境整備
①従来の公民館機能に加え、地域コミュニティ活動による地域づくりを展開する拠点としての機能を持つ「地域交流センター」と位置付け、全地域に21の地域交流センター、8分館を設置した。

②地域交流センターに職員を配置し(所長1名、行政窓口担当2名、地域担当2名、生涯学習・社会教育担当1名、地域づくり支援担当1名)、地域づくり協議会の立ち上げや運営支援など、地域に寄り添った支援を行っている。地域づくりを専門的な視点で支援する庁内組織として「地域づくり支援センター」設置するとともに、地域づくり支援専門員の配置や地域づくりアドバイザー制度を創設し、協働によるまちづくりの啓発や地域づくり計画策定のサポート等、地域づくりの相談やアドバイスに対応できるように体制整備を計ってきた。
現在の職員配置(係長1名、総務担当2名、地域づくり支援担当4名、施設整備担当2名)


4.財政支援(地域づくり交付金の創設を平成22年4月よりスタート)
①地域づくり協議会の組織運営や地域づくり計画にもとづいた活動を行うために要する経費に対して、地域づくり交付金を交付。

②交付金の総額
 269,866千円(平成30年度)
〔内訳〕地域づくり交付金     200,335千円(特別交付金分を含む)
    法定外公共物等整備事業費  69,531千円(里道、水路の整備)

③交付金額の根拠
  総額は市税収入の1%を目安とし、各地域への配分は、一定の財源を各地域へ配分する均等割と、地域の人口や面積に応じた比例割を組み合わせる等、各地域への配分額の上限を設定し、各地域づくり協議会へ交付している。


5.交付金の使途
各地域づくり協議会で策定する地域づくり計画に基づいて執行することとしているが、原資が公金であることから、一部制限を設けている。その他、各単位自治会(769自治会)への活動支援のために「自治会等自治振興交付金」(10,225千円)がある。


6.地域づくり交付金による実施事業の種別(平成27年度)
①補助金交付金(19.3% 各種事業への補助、防犯灯補助等)

②イベント(18.3% 各種イベント、ウォーキング、歴史文化探訪等)

③講演会、研修会、教室(15.0% 歴史講座、健康講座等)

④冊子、広報誌発行等情報発信(14.6% 広報誌、ホームページ、防災マップ等)

⑤施設整備(13.1% 法定外公共物補助、花壇植栽、史跡周辺整備等)

⑥備品、消耗品購入(8.2% 防災資機材、スタッフジャンバー購入等)

⑦その他、「調査、検討、情報収集」、「交流行事」、「地域ブランド形成」等
 

7.地域における活動上の課題
①高齢者世帯や単身世帯の増加及び世帯の小規模化等により、家族や自治会、町内会が担っていた「自助」、「互助」の機能が低下。

②他団体と地域づくり協議会の事業の重複や、担い手の確保や世代交代が進まないことにより、活動に携わる人の小数化や固定化。

③より多くの住民の声を運営に反映させる仕組みづくりが必要。

④地域課題は多種多様で、地域づくり協議会にも多面的な対応が求められており、それらの課題に対応するためには、行政だけでなく専門性を持った市民活動団体等、多様な主体との連携が必要である。

⑤地域づくり交付金の使途の固定化等により、新たな課題へ柔軟に対応できるように、制度の見直しや新たな財源の確保が必要である。


8.市の支援体制上の課題
①行政と地域の関係性にとどまらない多様な主体によるネットワークを構築し、運営にかかる専門的な相談にも対応できる中間支援体制の充実が必要である。

②全庁で協働によるまちづくりを推進するための仕組みが不十分であり、部局横断的な実働体制の構築が必要である。

③市職員の協働や地域づくりに対する意識の醸成を図るとともに、職員はより積極的かつ主体的にまちづくりに参画できる仕組みの検討が必要である。


9.今後の協働によるまちづくちの展望
①地域における日常生活の維持に向けた取り組みの推進について
 人口減少・高齢化社会が進展する中、今後も住んでいる地域で安心して住み続けられるように、それぞれの地域において日常生活を支える様々な機能を維持する取り組みへの支援が必要である。

②地域づくり協議会の体制整備について
 今後、地域づくり協議会がより持続的かつ安定的に地域づくりを行うためにも、地域において運営体制を整理するための支援が必要である。

③人口減少社会における多様な主体の確保について
 地域づくり協議会がその機能を十分に発揮するためには、地域住民一人一人が地域の構成員としての当事者意識を持ち、できるだけ多くの住民が参画し合意形成を図るとともに、地域内の若年層など幅広い年齢層やNPOなどの市民団体や事業者、地域おこし協力隊などの新たな担い手の参画を促し、その行動力や専門性を課題解決へのアクションにつなげる「マッチングの仕組み」が必要である。

④課題解決に向けた多様な取り組みにおける支援の強化について
 民間の助成金等を受けて地域課題の解決に取り組んだり、またビジネスの手法によって地域課題を解決するコミュニティビジネス等の取組を支援するための体制の構築が必要である。


10.第二次山口市協働推進プラン策定(平成30年3月)
①策定の趣旨
 条例施行後9年が経過し、地域づくり協議会を中心とした地域づくりが進んできたが、各地域では社会情勢の変化等により、常に多様な課題を抱えている。将来にわたって誰もが住んでいる地域で安心して暮らし続けられるように、今後も21地域それぞれの特性にあわせた地域づくりを進めていくとともに、市民活動団体をはじめ、多様な主体が協働して地域課題や社会課題を解決していくことが期待されています。
 そこで、第二次山口市協働推進プランでは、これまでの協働によるまちづくりの取り組み成果を基に、日々めまぐるしく変容を続ける社会情勢のもとでも、将来にわたり安心して暮らし続けることのできる地域社会を目指し、今後の10年間における協働による「地域づくり」に向けた取り組みの指針を示している。

②地域づくりの定義
 第二次山口市協働推進プランにおいては、これまで地域に引き継がれてきた祭りなどの伝統文化や歴史、自然などの地域資源を守り次世代に継承するとともに、地域住民を中心に市民活動団体や行政など様々な主体が関わり、福祉や防災、交通など地域での豊かな暮らしを支えるための多種多様な取り組みを「地域づくり」と定義します。


11.目指す協働による地域づくりの姿
①地域を思い、人々が集い、行動する“地域経営”へ~共に話し、共に汗をかく~個性豊かで活力ある自立した地域社会


12.目指す協働による地域像
①「話し合い」により情報共有や相互理解が深まる地域

②誰もが地域に「愛着や誇り」がもてる地域

③多様な「担い手」が育つ地域

④多様な主体が「つながる」地域


13.補完性の原則
 協働による地域づくりにおいては、「みんなで支え合う」ことが最も重要であり、生活課題や地域課題の解決等については、できる限り小さい単位で行い、小さい単位で解決が難しいものについては、大きい単位の団体等で補完していく「補完性の原則」による地域づくりを進めていく必要があります。
つまり、自治会や町内会でできないことを、地域づくり協議会で補い、地域づくり協議会でできないことは、行政等の様々な主体が補って課題解決を行うことが補完性の原則であり、これが協働による地域づくりが求める姿である。


14.自治会、町内会と地域づくり協議会
 自治会、町内会と地域づくり協議会は「車の車輪」として、地域の暮らしを支える重要なパートナーとして、お互いに補い合う「相互補完」の関係である。


15.施策体系

 

≪所感≫
 山口市では、平成20年12月に山口市協働のまちづくり条例を制定して、条例に掲げる「個性豊かで活力のある自立した地域社会」づくりのために、地域課題を解決するための具体的な施策の内容や実施時期を示したプランを策定し、平成22年4月に地域づくり交付金を創設し、各地域がいろいろな事業(防災灯設置、各種イベント、研修会、講演会、広報誌、防災マップ、花壇植栽、防災資材費購入、交流事業等)に取り組んでいる。21の地域が取り組んでいる事業に対して、地域づくり交付金を交付している。それぞれ21地域の安心安全なまちづくり、地域内のコミュニティは進んできているが、今後さらに少子高齢化が進むなかでの新たな課題にどう地域住民がお互いに向かい合って地域づくりを進めていくのか課題である。
鹿児島市においても、現在各校区コミュニティプランを策定し、年次的にプランに基づいて事業を進めている。また、集落核、団地核などの拠点形成に向けて取り組みを進めているところであり、山口市の行政、市民一体となった取り組みや、市の財政支援や人的支援など参考になりました。

 


 

【日時】    2019年1月18日(金) 9:15~11:30


【場所】    福岡市                             


【対応者】   
        議会事務局総務課秘書係総務係長
        議会事務局総務課秘書係書記
        都市政策部住宅政策課課長
        住宅都市局みどりのまち推進部みどり推進課共同係長
        住宅都市局みどりのまち推進部みどり推進課共同係


【調査概要】 コミュニティパーク事業について

⑴事業概要等について
①事業概要
 地域の皆さんによる公園の利用ルール作りと自律的な運営、管理を行うことで、地域の力によって、皆で使いやすい魅力的な公園を作る取組み。
②事業化に至った経緯
 地域住民が所有・運営する集会所は、現行法では不特定多数が利用する公園には設けられない。新制度の仕組みの下で、公園の管理運営を1年以上続けた町内会に対し、一般市民にも開放することを条件に設置を認める。魅力的な公園が地域の絆を深め、まち・地域を元気にする理念から、公園利用を促進し、地域活性化につながる。
③対象
 街区公園、緑地等 面積 1~2ヘクタール

⑵管理運営面について
①これまでの公園管理との大きな違い
➤町内会・愛護会・各種団体などで運営委員会を作り、管理運営について、自治協議会、運営委員会、市と協定を締結することで、地域でいろいろな事業ができる。

②住民側から見たメリット
➤地域独自のルールによる公園利用ができるようになる。
➤運営委員会が主催となり、新しい公園の使い方ができる。(夏祭・餅つき・バーベキュー大会・バザー・フリーマーケット・地域カフェ・子どもの自転車遊び・グランドゴルフ・健康教室など)
➤利用計画の提出のみで許可手続きが不要になる。
➤パークハウスや菜園などが設置できる。

③行政側から見たメリット
 急速な高齢化、若者の減少、個人と地域社会との関係の希薄化などの社会状況が変化する中、「地域活動に参加する人の減少」「地域活動の担い手不足・固定化」「見守り・支え合い機能の低下」など、「コミュニティにおける課題」が生じてきている。一方、市内の公園では、「市一律のルールにより公園は利用しにくい」「限られた財源の中での維持管理水準の低下」「公園愛護会などの担い手不足」などの公園における課題が生じている。本事業は、地域における公園のルール作りと自律的な管理により、この課題を解決し、地域にとって使いやすい魅力的な公園づくりと地域コミュニティの活性化につながる。

④運営委員会で、公園利用ルール、管理運営について、地域の皆さんに周知徹底のための話し合い、看板掲示などに努めることが必要。

⑶組織面について
①運営委員会の構成  町内会、自治会、公園愛護会、NPO法人、公園利用団体等

②運営委員会は、すべての地域の団体・個人で構成する自治協議会の承認が必要。理由として、地域住民が公園を利用することにより、地域コミュニティの活性化につながり、「魅力的な公園が地域の絆を深め、地域を元気にする」ためである。

③無料で公園管理、運営などを支援するコンサルタントからアドバイザーを派遣し、地域での話し合いを支援する。

⑷財政面について
①行政から地域に交付される金額
  ・公園愛護会活動報奨金         面積割合 年額 28,000円~42,000円)
  ・除草管理(機械除草等)        1000平方メートル未満 年額 30,000円
                      2500平方メートル以上 年額 65,000円
  ・樹木管理(剪定・害虫駆除)   剪定 50平方メートル未満 年額 3,000円
                      200平方メートル以上 年額 23,000円
  ・便所掃除               週1回実施      年額  50,000円
                      週2回以上実施  年額100,000円
  ・花づくり資金助成(福岡市緑のまちづくり協会より)
    街路樹・植栽帯などの公共用地、空き地などにおいて花壇づくりを行う活動で、
    花壇面積が10平方メートル以上のもの
       認定後5年未満  1平方メートル当たり 年額 2,000円(上限20万円)
       認定後6年以上  1平方メートル当たり 年額 1,000円(上限10万円)

②公園の広さ、実施回数で交付金は変動する。
③財政的には行政の支出軽減になる。


≪所感≫
 
 急速な少子高齢化の進展により、地域での個人と地域社会との関係の希薄化など、社会状況が変化する中、「地域活動に参加する人の減少」「地域活動の担い手不足、固定化」「見守り・支え合い機能の低下」などの「コミュニティにおける課題」が生じています。
 一方、これまでの公園は「行政の一律のルールにより使いづらい」などの課題がありますが、コミュニティパーク事業を導入することにより、「地域で利用しやすいルール」を決め、地域の自立的な管理を行える。結果、多くの地域住民が利用でき、地域コミュニティの活性化につながると思われます。本市の公園にもこの制度を導入することにより、地域のコミュニティ活性化にもつながると思います。

 

 

2019年03月15日