視察報告-LRT都市サミットin松山

出張者:ふじくぼ博文

 

【日程】   2018年1月12日(金)14:30~17:40
               13日(土)10:00~12:00



【場所】   松山市






【大会概要】 

1.開会式(内容省略)
  ①主催者挨拶:松山市長
  ②共催者挨拶:伊予鉄道㈱社長
  ③来賓挨拶 :国交省大臣官房技術審議官

2.LRTに関する事例・制度紹介
①「地域を担う公共交通の現状と支援施策」(国交省地域振興室長)
・公共交通の現状は、少子高齢化やモータリゼーションの進展などにより、一般バス路線が平成19年度以降で11,796㎞が廃止(全体の2.8%、約6割が赤字)、地域鉄道が平成12年度以降37路線・754㎞廃止され(約7割が赤字)、移動手段の60%を担っていたものが現在30%となっている。一方で免許を持たない高齢者(返納)や若者も増加して、移動手段の確保のためにも公共交通の果たす役割は大きい。
・国は、平成19年に「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」を施行し、25年に「交通政策基本法」施行、26年に「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律」など、基本法の理念に則り、地方公共団体が中心となり、まちづくりと連携し、持続可能な地域公共交通ネットワークの形成を図るための、地域交通網形成計画の作成制度を創設。また、地域公共交通再編実施計画の認定制度を創設した。また、網形成計画を具体的に進めるための再編実施計画を策定した自治体に対して、重点的な支援を行っていくとした。
・平成28年6月から開催された「地域公共交通の活性化及び再生の将来像を考える懇談会」において提言(内容は略)がまとめられ29年7月に国土交通省に提出されたと紹介があった。

②「LRT整備に関する最近の話題」(国交省街路交通施設課長)
・都市局として、コンパクトシティ・プラス・ネットワークの考えのもとに、公共交通や自動車、自転車、歩行者を総合的に勘案した戦略の策定やLRTプロジェクトの策定を推進しており、策定された戦略などの推進を図る支援制度として、行政向けの社会資本整備総合交付金を設けている。
・さらに、持続可能なまちづくりのためには、ヨーロッパでは、社会・経済・環境のトリプルボトムアップが推進されており、公共交通を中心とした歩いて暮らせるまちづくりを目指し、世界標準のまちづくりをしていくことが重要である。

③「LRTの現状及び支援スキーム」(国交省地域鉄道支援室長)
・全国におけるLRVの導入状況や軌道事業者の厳しい経営状況について紹介するとともに、今後は可能な限り上下分離方式を進め、施設については行政側で保有し、事業者には維持管理や安全運行に専念させることが路線を維持する鍵となる。

 

 

 

 

⑶首長会議(11都市の各自治体の首長がLRT都市ならではの街づくりを5分程度発表する)
①札幌市(副市長)
・札幌市まちづくり戦略ビジョン(H25~H34)を策定し、公共交通を中心とした集約型のまちづくりを推進し、大量輸送としてのJRや地下鉄、中量輸送としての路面電車やバスを位置づけ、利便性向上で公共交通回帰を促している。特に路面電車については、駅前通りのループ化でサイドリザベーション方式(軌道を左端に敷設)を導入して、交通渋滞の解消を図っている。また、超低床車両導入や路線の延伸も検討している。

②富山市(市長)
・日本初の公設民営の富山ライトレール(平成18年)をはじめ、市内電車環状線化(21年)、鉄道高架化事業に伴い新幹線駅高架下への軌道乗り入れ(27年)市内電車と富山ライトレールの接続も計画(31年度)など公共交通を軸としたコンパクトなまちづくりをすすめ、LRTネットワークの形成により、過度に車に依存したライフスタイルを見直し、歩いて暮らせるまちを実現している。18年度まで減少していた電車利用者が増加している。特に、昼間の高齢者の利用が増加していている。ICカード利用者の後方扉から下車する信用降車サービスをはじめ、トランジットモールの社会実験や市内宿泊者に外国人は無料、日本人は半額利用券の乗車券2回分をプレゼントしている。

③この他、福井市は、平成35年金沢―福井―敦賀間の北陸新幹線延伸を見据えた県内2つの地域公共交通網形成計画を策定に基づく福井市都市交通戦略を策定し、福井版LRTプロジェクトを進めている。豊橋市は、豊橋市交通計画を策定し、公共交通の利用促進に関する条例制定など市電利用促進に取り組んでいる。オープンデータを活用した運行情報システム「のってみりん」の開発、ふるさと納税の返礼品での運転体験など全国でも珍しい取り組みがある。岡山市は、路面電車を岡山駅へ乗り入れることで、交通結節機能の強化を図り回遊性の向上・活性化を目指しています。広島市は、JRの駅との交通結節点整備を進め、LRVの導入、電停のバリアフリー化、ロケーションシステムの高度化、優先信号を設置している。また、広島駅ビルへの2階部分への電車乗り入れを計画している。高知市は、駅前に軌道を伸ばしたことで利便性が向上している。長崎市は、行政と連携した取り組みとして、ICカード導入やセンターポール化、電停のバリアフリー化、外国語表示板の設置や運行情報等提供サービス「ドコネ」の導入をはじめ、LRVの導入や行先案内社内ディスプレイ設置、内外装の改修を行っている。今後、全国相互利用ICカードへの転換などを検討している。熊本市は、「熊本地震」で軌道沈下やレールの破断など10数か所で発生したが、平成29年度を復興元年と位置付け、復旧・復興に全力で取り組んだ。公共交通グランドデザイン(H24)を策定し、基幹公共交通(鉄道、市電、幹線バス)の強化、バス路線網の再編、公共交通空白・不便地域への対応をしている。市電に関しては、駅などの結節点の軌道改善や路面電車優先信号システム(PTPS)導入や全国相互利用ICカードの導入、市電ロケーションシステムやLRVの導入など先進的に取り組まれている。また、市電の延伸も検討している。鹿児島市は、松山副市長が登壇し、これまでの架線センターポール化や軌道敷緑化、交通局舎・電車施設のリニューアルやLRVの導入など紹介するとともに、交通局のLRT整備計画に基づく軌道改良、路面電車観光路線の新設計画について説明した。松山市は、LRVの導入をはじめ、郊外電車と路面電車の乗り継ぎのシームレス化や花園町通りの道路空間再配分、松山駅周辺整備事業として路面電車の延伸トランジットモール化を計画している。

 

⑷サミット宣言(別紙)
 サミット宣言では、人に優しく、活力に満ちた元気なまちを創るために、市民、事業者、行政が協働し、路面電車が走る街の風景、電車が奏でる音を「町の宝」として、守り続けるとともに、LRT化に努めることなど5項目を柱とするサミット宣言を採択した。同時に、2年後の開催地を札幌市とすることが発表された。

 

⑸松山の鉄道の歴史(二日目)
①「これまでの取組」伊予鉄道(株)常務
・松山市の鉄軌道の変遷や坊っちゃん列車の復元、超低床車両LRVの導入の取組などの紹介。

②映像上映

③「これからの取組」石井朋紀 松山市都市整備部都市・計画課課長
・立地適正化計画と整合した取り組みを推進しており、松山市駅前通りの片側3車線の道路を道路区域の再配分を行い、片側1車線、自動車通行帯、幅広い歩道を整備した取り組みを紹介した。

 

⑹記念講演「旅鉄‼六角精児「じゃあ、朝から乗りにいこうか!」」俳優六角精児氏
・六角氏は、自動車の運転免許を所持していなく、移動手段は全て公共交通で、中でも鉄道移動が好みで、鉄道に乗ることでストレスを発散できるとのことであった。また、路面電車は、まちの姿を眺めながら移動ができ、気になったところで気軽に降りて散策できることが魅力と語った。最後に「鉄道にしろ、電車にしろ、あるものが当たり前と思わず、積極的に乗ってください」と会場に呼び掛けた。

 

 


 ≪所感≫

 まず、前回は鹿児島市でLRT都市サミットを開催したが、その時は国土交通省のLRTに関する事例・制度紹介については、発表のパワーポイントが資料として当日配布されたが、今回は資料がなくメモに苦労した。(現在、松山市HPで公開している)次回は改善して欲しい。

 鹿児島県が策定すべき交通網形成計画を策定しておらず、本市が公共交通ビジョンを策定して立地適正化計画と整合した取り組みを推進しているが、もっと、県と連携して早急に地域交通網形成計画を策定し、網形成計画を具体的に進めるための再編実施計画を策定して、重点的な支援を受けるべきだと思う。

 札幌市、熊本市、鹿児島市以外は全て民間事業者だが、行政との協働で路面電車を中心に据えた様々な先進的施策を展開していることが理解できた。

 

 

 

 

 

2018年01月12日