出張者:秋広正健
【日程】 2018年4月26日(木)9:30~11:00
【場所】 八代市役所
【対応者】 農林水産政策課長
農業振興課長 農業振興課園芸畜産係長
水産林務課長 水産林務課林務係長 他
農地整備課長
【調査内容】 八代市の農政について
1.農業の現状
●農業戸数の推移
5,249戸(H17)→4,185戸(H27) △20.3%
●直近の自給的農家戸数
1,025戸(24.5%) ※総農家戸数 4,185戸
●農業就業者の平均年齢
2005年 | 2015年 | |
---|---|---|
総農家戸数 | 5,249戸 | 4,185戸 |
専業農家 | 1,615戸(30.8%) | 1,556戸(37.2%) |
兼業農家 | 2,394戸(45.6%) | 1,604戸(38.3%) |
自給的農家 | 1,240戸(23.6%) | 1,025戸(24.5%) |
農業就業者数 | 9,751人 | 6,829人 |
65歳以上 | 3,848人 | 2,989人 |
50~64歳 | 2,940人 | 2,305人 |
49歳以下 | 2,963人 | 1,535人 |
2.農業振興策について
①新規就農者や担い手確保の具体策
●各種相談に対応するためのワンストップ窓口として、平成26年度より営農支援室(JA営農指導員、市職員OB 計2名)を設置
●生産面・経営面のサポート
・就農計画作成のアドバイス
・就農後の巡回指導等
●農業次世代人材投資事業の活用
●農地集積加速化事業(熊本県)を活用した集落営農組織の育成
・重点地区 平野部…5地区(うち、4地区法人化) 中山間部…2地区(うち、1地区法人化)
●熊本県農業アカデミー事業と連携した農業技術者養成講座の実施
②高齢農業者・自給的農家に対する営農指導の内容等
主要作物はトマトやい草。経営規模の大きな農家が主体。
現在、高齢農業者や自給的農家に対する市としての体系的な営農指導は実施していないが、農業従事者の高齢化が顕著な
中山間地域においては集落営農への取り組みを進めている。
3.都市近郊農業について
①現状及び地域特性を活かした農業振興策
平成17年8月、6市町村の合併により、人口136,886人の新「八代市」としてスタートした。
平野部の農地は、大半が干拓により造成されており、生産量日本一であるトマト、い草をはじめ、キャベツ、ブロッコリー等の
露地野菜が栽培される。一方、中山間部では、晩白柚等の果実、生姜、茶などが栽培される。海岸部から山間部にかけては、
様々な農産物が生産されている。
都市近郊型農業というより農村型農業に近く、トマト、い草、露地野菜などを中心に、大都市部への市場出荷型農業である。
②高齢農業者や少量多品目生産者等をいかした農作物直売所の活用策
農業従事者の高齢化が進行(60歳以上が57.9%)しており、自給的農家の割合も24.5%となっている。このような自家消費を
主とした農家の出荷先として、JAや市、民間等が管理する約20か所の直売所の活用が重要。
4.農産物特売所
①生産者確保の具体策
各直売所での対応となるため把握していないが、出荷協議会等を組織し、生産者の確保に努めている直売所が多いようである。
②生産履歴、飲食施設、体制作り
生産履歴は、市やJAが設置した直売所においては情報を共有できるよう推進しているが、民間設置の直売所に関しては把握
していない。
今後、東京オリンピックを見据えたGAPの普及に向けた取り組みを推進する必要があるが、高齢農家や自給的農家において、
GAPのハードルはかなり高いと思われる。
飲食施設は、物産館等には設置されているが、民間の直売には設置されていない。(別紙1参照)
③グリーンツーリズムとの連携
体系的連携はないが、国等の補助金を活用した農産物の収穫体験など、単発的に実施しているものはある。
市では30年度より、直売所だけでなく観光農園に関心のある団体や生産者を対象に収穫体験ができる環境づくりとして、
受け入れ体制、サービス提供方法、商品開発等、専門家チームによるバックアップ、モニターツアーの実施や旅行会社への
商品販売活動などのPR活動、顧客獲得活動を実施することとしている。
④鏡町農産物共同販売場
●販売実績
25年 | 26年 | 27年 | 28年 | 29年 |
---|---|---|---|---|
4,984千円 | 5,650千円 | 6,336千円 | 7,981千円 | 9,817千円 |
(地域との連携策及び単独事業とした理由)
施設は、合併前の鏡町役場時代に地元農協婦人部の要望を受けて設置されたものであり、施設及び土地については無償で貸し付けるものとし、施設の運営、管理は会員が独自に行っている。
5.有害鳥獣被害対策について
●現状と課題
近年、鹿、猪の人里近くの出没が多くみられ、平野部での被害が拡大傾向にある。そこで、24年度から鳥獣被害対策実施隊を
設置し、多くの隊員を募り捕獲活動を行っている。また、侵入防止柵を設置し、捕獲と防護の両面から被害防止対策を推進し
ている。
しかし、猟友会会員の減少や高齢化のため捕獲が困難になってくることや、中山間地域農業者の高齢化による耕作放棄地の
増加に伴い、有害鳥獣の温床となることが危惧される。
今後は、捕獲の担い手確保や耕作放棄地の刈り払い、放任果樹の除去など地域住民に対する自己防衛策の意識づけや啓発も
課題となってくる。
≪所感≫
(1) 新規就農者対策や担い手確保対策等については、いろいろな取り組みを進めているが、その中でも特に印象に残ったのが、各種相談に対応するためのワンストップ窓口として設置された営農支援室であった。同支援室には支援員が配置されており、各種問題の解決に向けて、巡回指導等に取り組んでいるとのことであった。
本市においても、農業振興策の一つとして、特に都市農業とりわけ市街化区域周辺部の支援策として、営農支援員を配置し農業振興を図るべきであると思う。
(2) 有害鳥獣被害対策については、近年、シカやイノシイが人里近くまで出没することが多くなり、被害も拡大傾向にあることから、平成24年度から鳥獣被害対策実施隊を設置して捕獲活動を行っている。また、出没地域をネットで囲む侵入防止柵を設置し、捕獲と防護の両面から被害防止対策を推進しているほか、耕作放棄地の刈り払いや、柿などの放任果樹の除去など地域住民の自己防衛策などにも取り組んでおり、本市においても参考となる取り組みであると感じた。
【日程】 2018年4月27日(金)10:00~12:00
【場所】 福山市役所
【対応者】
高齢者支援課地域支援担当課長
高齢者支援課次長(予防給付担当)兼指導員
市議会事務局事務局長
議会事務局議事調査課長
【調査内容】 高齢者外出・買物支援事業について
1.事業に至った経緯
少子高齢化、過疎化や公共交通機関を利用しにくくなったことなどから、通院、買物等の外出が困難、孤立する高齢者が多くなってきた。地域で高齢者を支える仕組みとして、平成21年度「高齢者おでかけ支援事業」を創設。24年度に「買物支援事業」を創設、25年度にこれまでの2つの事業を統合して「高齢者外出・買物支援事業」とし、地域住民、団体と福山市との協働で実施している。
2.事業概要
外出支援事業:
小学校区を単位として、高齢者が居住する中学校区の範囲内において運行ルートを定め、最寄りのバス停や病院等への送迎を無償で行う。
買物支援事業:
日用品や食料品等の注文の受付を配達、身近な場所への簡易店舗設置による日用品等の提供、地域巡回型の移動販売車による日用品等の提供と通じて外出が困難な高齢者の日常生活における買物を支援する
3.共同事業とした理由
地域住民の支え合いによるため共同事業とした
4.事業費の財源内訳
介護保険制度(介護予防・日常生活支援総合事業、一般介護予防事業)
5.事業実施までの流れ
事業に賛同する地域住民が支援グループを結成し、地域住民、団体、福山市の協働で実施スタートした。
6.ボランティアへの委託内容、謝金の有無、採用条件等
7.事業の実施状況
8.事業実施以降の改善点
9.成果と課題等
10.今後の方向性
≪所感≫
高齢者外出・買物支援事業については、少子高齢化や過疎化、または交通不便地のため、病院や買物等を含めた外出が困難になる高齢者が多くなってきていることから、高齢者が安心して暮らせるように、地域で高齢者含めて支え合う仕組みとして、「高齢者おでかけ支援事業」を2009年度(平成21年度)に新規事業として創設されている。その後、2012年度(平成24年度)に「買物支援事業」が創設され、2013年度(平成25年度)には、「高齢者おでかけ支援事業」と「買物支援事業」を統合し、名称を「高齢者外出・買物支援事業」として、地域住民・団体と福山市との協働による事業として実施されている。
このうち外出支援事業については、介護保険制度の「地域支援事業の一般介護予防事業」として、高齢者が居住する中学校区のうち、9つの学区で実施されている。実施している9団体については、福山市より平均して1団体につき、120万円の事業費が交付されている。
これら福山市の取り組みについては、本市においても高齢者の通院や買物など、外出支援のための事業としておおいに参考になる事業であった。
【日程】 2018年4月28日(土) 9:30~10:30
【場所】 九州芸文館
【対応者】
市民生活部かんきょう課長補佐兼リサイクル推進担当係長
市民生活部かんきょう課
市議会事務局
【調査事項】 市民との協働・地球環境保全~川と水を守る運動・クリーン作戦について
1.川を守る運動
①事業の経緯
昭和55年、住民が協働で河川や下排水路を清掃することにより、汚染防止の必要性の認識、住みよい環境づくりの推進のため、「筑後市川と水を守る運動推進連絡協議会」を発足。市及び観光協会等27各種団体で組織される。
②事業概要
実施日 毎年5月第2.3日曜日(予備日:第4日曜日)
清掃箇所 河川、下排水路、農業用水路及び道路側溝等
実施主体 各行政区(一部、環境衛生支部)
実施時間 概ね午前中
実施方法 実施主体で立てた計画に基づき、地区住民、事業所の協働作業による
広報 広報誌、市HP、地区内回覧等
貸出用具 側溝蓋開け器、スコップ、一輪車等
その他 作業に伴う傷害事故発生時は、市民総合災害補償保険を適用
③事業実績
27年度 | 28年度 | 29年度 | |
---|---|---|---|
参加者数 | 11,243人 | 11,475人 | 11,241人 |
収集及び搬入量 (可燃ごみ) | 38,470㎏ | 30,290㎏ | 28,480㎏ |
収集及び搬入量 (泥土) | 386.21㎥ | 374.00㎥ | 396.00㎥ |
事業費 | 7,009,602円 | 7,805,258円 | 7,433,020円 |
④成果と課題
成果:事業開始から38年経過し、「川と水を守る運動」が市民に定着し、市民、事業所、行政が一丸となって取り組む一大協働イベントとなっている。
また、20以上の地元業者がそれぞれの地域で参加協力し、清掃活動、重機及び作業員の提供を行っている。
課題:若年者、壮年者が増えず、参加者の高齢者割合が進んでおり、作業の負担が増大している。特に側溝清掃等が困難になり、行政への要請が高まっている。また、行政区に加入していないアパート住民の参加が少ない。
下水道の普及に伴い、「水路へ排水していない」という理由で不参加の方が増えているため、道路愛護や地域清掃の意識づけを促し、参加者の呼び戻しが必要である。
2.クリーン作戦について
①事業の経緯
ゴミを拾うことによって捨てない心を育て、ゴミ減量ときれいなまちづくりを進めることを目的とし、駅前通りや各地区の公園などを重点に、毎月第2土曜日に実施。(1月、5月は除く)
②事業の概要
行政区長、老人会、子供会などの地元住民と役所職員で、市内全小学校区(11校区)をひと月に1校区、順番に実施。
年度 可燃ごみ(㎏) | 不燃ごみ(㎏) | 参加者数(人) | |
---|---|---|---|
18年度 | 1,380 | 1,795 | 1,995 |
21年度 | 1,060 | 990 | 2,190 |
24年度 | 920 | 560 | 1,540 |
27年度 | 690 | 240 | 1,150 |
29年度 | 380 | 160 | 800 |
※経費について予算計上なし。以前の市指定可燃ごみ収集袋の在庫を利用
③成果と課題
成果:収集量が年々減少傾向にあり、ゴミの「ポイ捨て」をしないという意識が浸透してきている。
課題:参加者が減少してきている
④「やさしい環境講座」の開催
クリーン作戦終了後、「地球温暖化の話」や「段ボールコンポスト~自家製対比の作り方」など、環境をテーマに講座を行っている。
3.ワークブックを利用したゴミ分別原料教育について(廃棄物減量化の取り組み)
①事業の経緯と目的
平成19年7月9日 環境対策審議会答申
平成20年4月1日 一般廃棄物処理手数料改定
平成20年6月3日 長崎大学との共同研究契約締結
平成21年3月 「ごみとわたしたちのくらし」ワークブック発行
次世代を担う子供たちが、自分たちの住む町のゴミ出しを学ぶことで、生活習慣として身につき自然に行動できるようになることで循環型社会の推進を図る。小学4年生を対象に授業
②事業費(過去5年)
平成25年 829,224円
平成26年 668,603円
平成27年 522,540円
平成28年 519,164円
平成29年 533,532円
③事業概要
平成20年度 「筑後市小学校社会科資料集作成委員会」を創立。(13名)
授業で活用するワークブックを作成し、市内11小学校に配布。
平成21年度 4月より配布したワークブックに沿って4年生に11時限の授業開始
クリーンセンターの見学やゴミ分別テストなど実施。
平成23年度 ワークブック活用の解説DVD、資料集DVDを作成。
平成24年度 教科書改訂に伴い、新教科書に沿った大幅な改定を行う
平成25年度 児童向けに「ごみ処理についての説明ビデオ」(SDカード)を作成。テストにも対応できるようにし、
各小学校へ配布。ゴミ分別テストを保護者に実施。
平成26年度 ペットボトル回収事業を開始(11校区6校参加)
各小学校で「廃棄物の処理」の授業で取組んだもの等を環境フェスタで掲示
※アンケートの実施や担当教諭に活用等のヒヤリングを行い、ワークブックの改善を行っている。
【所感】
「川と水を守る運動」は、住民が協働で河川や下排水等の清掃を実施することにより、汚染防止の必要性を認識するとともに、住みよい環境づくりによる協働のまちづくりを進めている。昭和55年に筑後市川と水を守る運動推進連絡会(市と7つの各種団体で構成)が発足し、川と水を守る事業を76行政区(町内会)において、地域・事業所・行政が一丸となって取り組んだ結果、一大協働イベントとして市民に定着してきている。
「クリーン作戦」は、平成6年1月より毎月第2土曜日を基本に、一つの小学校区を重点地区として11校区を順番に実施している。参加者は市の三役や職員を初め、町内会長や役員、環境美化巡視員、老人会、子供会、環境ボランティアなどであり、地区住民が小学校の校庭に集まり、市長のあいさつ、ラジオ体操の後、収集行動を行う。集めたごみは小学校が各地区の資源ごみ保管庫に持っていく。成果としては、収集量が年々減少傾向にあり、ポイ捨をしないという意識が浸透してきている。課題としては「クリーン作戦」が市民の中に定着してきている一方で、参加者が年々減少傾向にあるとのことである。
「ワークブックを活用したごみ分別減量教育」は、小学4年生の担当教諭を中心にいろいろな取り組みがなされており、次世代を担う小学4年生が、自分たちが住んでいるまちのごみの分け方や出し方を学ぶことによって、生活習慣として身につけ、自然に行動できるようになることで循環型社会の推進につなげている。
以上、筑後市の3事業については、市民と協働のまちづくりを進める上で、非常に本市まちづくりの参考となった。