視察報告-LRT都市サミット札幌2019

出張者:ふじぼ博文

【日程】   2019年11月8日(金)14:30~17:35
                 9日(土)10:00~12:00


【場所】   札幌市


【概要】

(1)開会式(内容省略)
   ①主催者挨拶:秋元克広(札幌市長)
   ②共催者挨拶:浦田 洋(札幌市交通事業管理者)
   ③来賓挨拶 :長谷川岳(総務副大臣)
         :内田欽也(国土交通省 大臣官房審議官)

(2)LRTに関する事例・制度紹介
   ①「地域公共交通施策に関する国の取組」原田修吾(国交省総合政策局地域交通課長)
    ・公共交通の現状は、少子高齢化やモータリゼーションの進展などにより、一般バス路線が
     平成19年度以降で11,796㎞が廃止(全体の2.8%、約6割が赤字)、地域鉄道が平成12年度以降
     37路線・754㎞廃止され(約7割が赤字)、移動手段の60%を担っていたものが現在30%となっている。
     一方で免許を持たない高齢者(返納)や若者も増加して、移動手段の確保のためにも
     公共交通の果たす役割は大きい。

    ・国は、平成19年に「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」を施行し、25年に「交通政策基本法」施行、
     26年に「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律」など、基本法の理念に則り、
     地方公共団体が中心となり、まちづくりと連携し、持続可能な地域公共交通ネットワークの形成を図るための、
     地域交通網形成計画の作成制度を創設。また、地域公共交通再編実施計画の認定制度を創設した。
      また、網形成計画を具体的に進めるための再編実施計画を策定した自治体に対して、
     重点的な支援を行っていくとした。(令和元年8月までに528件策定)

    ・バリアフリー政策について、平成6年のハートビル法、平成12年の交通バリアフリー法の策定から
     両法を発展的に統合・拡充するために平成18年にバリアフリー法が制定された。
      また、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律が改正され平成30年11月施行された。
     これにより、1日の利用者3000人以上の鉄道駅が平成32年度までに原則として
     全てバリアフリー化を実施すると定めた。

    ・インバウンド対応の公共交通利用環境の革新等について、多言語対応・無料Wi-Fi・トイレの洋式化・
     キャッシュレス決済対応などの補助メニューを用意している。

    ・新たなモビリティサービスとして、MaaS(Mobility as a Service)スマホアプリを組み合わせる
     実証実験も全国19事業認定されスタートしている。

   ②「LRT整備に関する最近の話題」工藤 健一(国交省都市局街路交通施設課企画室長)
    ・都市局として、コンパクトシティ・プラス・ネットワークの考えのもとに、
     公共交通や自動車、自転車、歩行者を総合的に勘案した戦略の策定やLRTプロジェクトの策定を
     推進しており、策定された戦略などの推進を図る支援制度として、行政向けの社会資本整備総合交付金
     (平成31年度:8,713億円の内数)を設けている。

    ・LRT等に関する最近の整備事例は、札幌市が平成27年12月に路面電車の延伸とループ化
     (サイドリザベーションによる)開業し、新たに延伸も計画している。
     福井市は福井鉄道とえちぜん鉄道の相互乗り入れを開始した。
     富山市では、北陸新幹線開業・在来線高架化完了に合わせて、富山ライトレールと
     富山軌道を富山駅で接続した。宇都宮市は平成30年3月から、上下分離方式のLRT整備をはじめました。
     また、広島市は広島電鉄・JR西日本は広島駅南口広場の再整備の方針を取りまとめた。
     岡山市と総社市、JR西日本は吉備線のLRT構想を具体化している。

   ③「LRTの現状及び支援スキーム」西尾 佳章(国交省鉄道局地域鉄道支援室長)
    ・全国におけるLRVの導入状況や軌道事業者の厳しい経営状況について紹介するとともに、
     今後は可能な限り上下分離方式を進め、施設については行政側で保有し、
     事業者には維持管理や安全運行に専念させることが路線を維持する鍵となる。
     
(3)首長会議(9都市の各自治体の首長がLRT都市ならではの街づくりを5分程度発表する)
   ①札幌市(秋元克広市長)
    ・札幌市まちづくり戦略ビジョン(H25~H34)を策定し、公共交通を中心とした
     集約型のまちづくりを推進し、大量輸送としてのJRや地下鉄、中量輸送としての路面電車やバスを位置づけ、
     利便性向上で公共交通回帰を促している。特に路面電車については、
     駅前通りのループ化でサイドリザベーション方式(軌道を左端に敷設)を導入して、
     交通渋滞の解消を図っている。また、超低床車両導入や路線の延伸も検討している。

   ②富山市(中村健一副市長)
    ・日本初の公設民営の富山ライトレール(平成18年)をはじめ、市内電車環状線化(21年)、
     鉄道高架化事業に伴い新幹線駅高架下への軌道乗り入れ(27年)市内電車と富山ライトレールの
     接続も計画(31年度)など公共交通を軸としたコンパクトなまちづくりをすすめ、
     LRTネットワークの形成により、過度に車に依存したライフスタイルを見直し、歩いて暮らせるまちを
     実現している。18年度まで減少していた電車利用者が増加している。特に、昼間の高齢者の利用が
     増加していている。ICカード利用者の後方扉から下車する信用降車サービスをはじめ、
     トランジットモールの社会実験や市内宿泊者に外国人は無料、日本人は半額利用券の乗車券2回分を
     プレゼントしている。

   ③ この他、豊橋市は、豊橋市交通計画を策定し、公共交通の利用促進に関する条例制定など
     市電利用促進に取り組んでいる。オープンデータを活用した運行情報システム「のってみりん」の開発、
     ふるさと納税の返礼品での運転体験など全国でも珍しい取り組みがある。
     岡山市は、令和4年に路面電車を岡山駅へ乗り入れることで、交通結節機能の強化を図り回遊性の向上・
     活性化を目指している。また、新型車両としてチャギトン電車を導入した。
     広島市は、JRの駅との交通結節点整備を進め、LRVの導入、電停のバリアフリー化、
     ロケーションシステムの高度化、優先信号を設置している。また、広島駅ビルへの
     2階部分への電車乗り入れを計画している。
     また、グリーンムーバでは、全扉降車サービスを実施している。
     松山市は、バリアフリー化、外国人観光客への対応や松山市駅前広場をコンパクトシティの
     シンボルとして整備した。長崎市は、行政と連携した取り組みとして、ICカード導入やセンターポール化、
     電停のバリアフリー化、外国語表示板の設置や運行情報等提供サービスの導入をはじめ、
     LRVの導入や行先案内社内ディスプレイ設置、内外装の改修を行っている。
     来年度、全国相互利用ICカードへの転換などを計画している。
     熊本市は、「熊本地震」で軌道沈下やレールの破断など10数か所で発生したが、
     平成29年度を復興元年と位置付け、復旧・復興に全力で取り組んだ。
     公共交通グランドデザイン(H24)を策定し、基幹公共交通(鉄道、市電、幹線バス)の強化、
     バス路線網の再編、公共交通空白・不便地域への対応をしている。
     市電に関しては、駅などの結節点の軌道改善や路面電車優先信号システム(PTPS)導入や
     全国相互利用ICカードの導入、市電ロケーションシステムやLRVの導入など先進的に取り組まれている。
     また、市電の延伸も検討している。鹿児島市は、松山副市長が登壇し、こ
     れまでの架線センターポール化や軌道敷緑化、交通局舎・電車施設のリニューアルやLRVの導入など
     紹介するとともに、交通局のLRT整備計画に基づく軌道改良、路面電車観光路線の新設計画について
     説明した。



(4)サミット宣言(別紙)
   サミット宣言では、『市民、地域、事業者、行政が協働し、まちのシンボルである路面電車等のLRT化に努めるとともに、
   公共交通の利用促進を図り、環境負荷の少ない持続可能な低炭素社会を目指すことなど5項目を柱とする
   サミット宣言を採択した。同時に、2年後の開催地を長崎市とすることが発表された。

(5)サミット二日目 記念講演等(カナモトホール)……録音と撮影が禁止であった。
   ①オープニング映像
    ・「Happy Loop~LRTがつなぐ幸せのループ」と題して、
     ループ化した市電とそれを利用する市民の表情を追いかけた作品。
   ②「知っていると面白い札幌路面電車」 街歩き研究家 和田 哲 氏
    ・和田氏は、路面電車沿線で生まれ育った経験を通して、音による電車や天候などの識別をはじめ、
     歴史や電停の名称の由来など独特の世界観を披歴された。
   ③「LRT・路面電車の楽しみ方を語ろう!!」 石丸謙二郎氏×村井美紀氏
    ・石丸謙二郎氏と村井美紀氏によるトークショーでは、お二人それぞれの路面電車や
     鉄道に関する体験や知識が話されました。特に、石丸氏はヨーロッパやアジアなどの
     世界の鉄道の紹介を中心に、また、村井氏は京都や富山など国内の電車の紹介を中心に
     電車の楽しみ方についての話がされました。お二人から、
     「バスはどこへ行くかわからないが、路面電車はレールがあるから安心して乗ることができる」
     また、
     「路面電車はゆっくりと街の姿を眺めながら移動できる」などの意見も出され、
     路面電車がみんなに親しまれている理由などわかりやすく話された。

 

 

 

【所感】
 前々回、鹿児島市でLRT都市サミットを開催し、その時は国土交通省のLRTに関する事例・制度紹介は、パワーポイントが資料として当日配布されたが、今回も資料がなくメモに苦労した。(現在、札幌市HPで公開しているが)次回こそは改善して欲しい。
 鹿児島県が策定すべき交通網形成計画を策定しておらず、本市が公共交通ビジョンを策定して立地適正化計画と整合した取り組みを推進しているが、もっと、県と連携して早急に地域交通網形成計画を策定し、網形成計画を具体的に進めるための再編実施計画を策定して、重点的な支援を受けるべきだと思う。また、国土交通省は上下分離方式に力を入れて補助を出すとともに、新たにインバウンドの観光客を見据えた補助等も構築しているようなので、活用できるよう研究したい。
 札幌市、熊本市、鹿児島市以外は全て民間事業者だが、行政との協働で路面電車を中心に据えた様々な先進的施策を展開していることが理解できた。
 また、市電の中に行政からのパンフが置けるラックがあり、本市でも検討すべきと思った。


 


 




 

2020年01月08日